その時、その人はどうするか

「人は何故、簡単に他人を傷付けてしまうのだろう。
 世の中は残酷で、バカか、バカなフリができる人間しか生きられない。
 ねぇ、それじゃあ、それほどバカでもなく、けれど、バカなフリはできない人間は、どうしてると思う?」
寂しくなって、あの人は私に尋ねた。
「答えは簡単。
 雷に当たるか、車に轢かれるか、もしくは自ら儚くなるか・・」
それは、その人が私によく言う、自らの死に方。
「飛ぶ鳥、後を濁さず・・だったのでは?」
涙を堪えて何とか返すと、小さな笑いが生まれた。
「ふふ、敵わないな・・」


静かな人。
感情的にならない。
ヒルで冷静な本人は、そんな自分を嫌っているけれど、私は好きだ。
静かな怒りや悲しみが、じわじわと私を痛めつける。
本人は私を痛めることに、より傷ついていて、それでも、私に甘える自分に安心もするらしい。