目覚め

朝、目覚めると頭の中がすっきりしていて、
「俺、やっぱ朝が好きだわ」
と思った。
暗い部屋、雨戸の隙間からこぼれる筈の光はなく、開けると、空からくぐもった美しい雨の糸が降りていた。
青灰と赤紫で構成された空、キラキラした瞳を向ける隣の愛犬は優しく、住宅街を包む紅葉は土の匂いを感じさせる。
空気に彷徨う小さな物質が僕の目をチクチクと刺して、メガネを求めた。
引き出しを開けようとして、足に水を感じる。
手の甲が剥け、血が流れていた。
全身神経過敏になっていて、気分がいいんだろう。
人の皮が厚いなんて、誰が言った言葉だろう?
皮なんて、1枚しかないじゃないか。
シャボンのように薄く、破けやすいもの。
目なんて、何もカバーがないときてる。
人の心は感じられないのに、自然物質には見えていない小さなものまで感じることが出来るなんてね。
身体って上手くは出来ていないらしい。