“思い出す”という表現はおかしいのかもしれない。
貴方はずっと、私の前にいるのだから。
もちろん、貴方自身じゃない。
貴方には会えない。
貴方を探しには行かない。
貴方に会わないこと、貴方に私を感じさせないことが、貴方への優しさだと思っているから。
貴方は言葉にこだわった。
1000の言葉よりも一瞬の温もりが大切だってことを知っていながら、私の言語センスだけを愛していた。
ふとすると、貴方の言葉が、声が、繰り返し聞こえてくる。
「飽きるということほど、悲しいことはありません。
 嫌うということは、まだベクトルが働いているのであって、そこにあるのです。
 けれど、飽きるということは…」
貴方は私に飽きてしまった。
私に何の関心も持たなくなってしまった。
元々、私のセンスしか興味を持ってくれなくて、私は完璧な人間にはなれなかった。
待っていてくれたのに、私だけが急いでしまって、貴方が愛してくれたモノさえもなくしてしまった。


貴方を探さない。
貴方に会わない。
貴方が私の通る場所に来ないように、私の居場所が分かるようにしている。
・・ホントは会いたくて、貴方に嫌われたくて、やっている?
嫌われるってことは、私の存在に気付いているってことだから・・・。