何度も読み返してしまう推理短編集

今回は分かりやすく、☆を使って感想を述べることにしました。
最高値は☆5つです。


メルカトルと美袋のための殺人 (講談社文庫)
本格推理度:☆☆☆☆
迷(惑)探偵度:☆☆☆☆☆
人間不信度:☆☆☆☆☆

本格推理物が好きな方、また、個性的なキャラクターが活躍する話を好む方向け。
自意識過剰で傲岸不遜な自称・名探偵のメルカトルが活躍する小説です。
メルカトルは、事件解決能力は高名なシャーロック・ホームズ以上かと思われるが、完全犯罪を仕立てる能力も天才的という要注意人物。
麻耶氏作品の代表的登場人物でありながら、初登場本で亡くなったメルカトルの魅力(?)が詰まった痛快な短編集ですね。


名探偵の掟 (講談社文庫)
本格推理度:☆☆☆☆☆
トリック高度:☆
キャラ共感度:☆☆☆☆☆

異色の本格推理物。
主役の名探偵や友人の刑事は、自らを“登場人物”と自覚しており、周りも彼等にその“役”を演じさせる為、奮闘する話。
名探偵は名探偵で居続けなければならず、他の者は重大な証拠を発見しても、さも名探偵が一番最初に気付いたように仕向けるのである。
名探偵は作者の時代遅れなトリックを他登場人物の前で披露することに、友人の刑事は探偵が事件を解くまで自分は全く見当違いの捜査をしていなければならないことに、犯人は詰まらない動機を抱え殺人を犯さなくてはならないことに、各々疲れきっているというのが読んでいて面白い。
ちなみにこの作品、続編として『名探偵の呪縛』が出ているが、こちらは文の書き方も本作品とは違い、古典推理物風で、始終シリアスな小説である。


百器徒然袋-雨 (講談社ノベルス)
本格推理度:☆
名探偵度:☆
榎木津度:☆☆☆☆☆
短編集と言っていいのかどうか・・。
主役は京極堂シリーズで浮きすぎているレギュラーキャラクター、榎木津礼二郎だ。
京極氏の本は見た目に分厚く、文章も小説好きでなければお堅いイメージを抱いてしまうが、この作品にはそれがない。
いや、本は分厚いけれど、短編集(?)ですから。
話も最初から最後まで榎木津さんが出ているから、彼の破天荒ぶりを笑っているうちに終わってしまう。
推理小説というよりは、笑い話の部類に入るだろう。