03 ありがとう

私たちは、彼の引退宣言から毎日チャットしていた。
彼がクラハンを開いてくれるように、話をした。
多くの仲間と狩が出来るようになれば、昔のように戻ることが出来れば、彼を引き止められるかもしれないと思ったから。
私が主催するのではなく、彼が主催するのが、君主代理の彼にふさわしいと。
その日は、彼の案内でSC*1へBM*2の旅へ出かけた。
私の別キャラエルフも、まだ行ったことがない。
参加者は場所が良かったこともあり、多かった。
ダークエルフの村に着いて、メンバーが減り、その後、今度は私が、まだ彼が行ったことがないというホルン*3宅へ案内した。
いつもながら他にプレイヤーのいない静かな場所。
そこで少しチャットをし、私と彼以外のメンバーは去った。
「今日は楽しかったね」
「うん」
私たちは、長く話していた。
毎日、4〜6時間はチャットしていたように思う。
それまで、私は23時に就寝していた。
彼の引退宣言からは、4時頃まで起きていた。
起床時間が7時だというのに。
「あのね」
彼が唐突に話題を変えた。
「俺、今、リネをまだやめてなくて良かったって思ってるんだ」
「え?」
「ウノと話すことが出来て、また楽しいって思えるようになったよ。
 まだ続けたいなってね」
驚いた。
彼が話に付き合ってくれるのは、別れる前の優しさだと思っていた。
「ありがとう」
とても嬉しかった。
私も楽しかったから。
私の存在が彼を喜ばせることが出来ていたと分かって、胸が熱くなった。

*1:沈黙の洞窟

*2:ブックマーク

*3:エルフ村東洞窟にいる魔法屋