04 王子との出会い

wizの引退宣言からしばらくして、私は新キャラクターを作った。
毎晩遅くまで彼と話をしていたことを快く思わない人がいたためだ。
だからといって、彼とのチャット用に作ったわけではない。
独りで誰にも干渉されぬキャラクターが欲しかっただけ。
知り合いのいないキャラクターには、wisも便箋もこない。
wis・便箋OFFにしていても、不思議に思われることもない。
ゆっくりと時を過ごせた。
作ったのは♂wiz。
育てる気もなく、ただ倉庫が使えるLV5で成長は止まっていた。


引退宣言より1週間ほどして、私は新キャラクターのwizで彼にwisを送った。
彼とチャットをするときは、このキャラクターでいればいいと考えたのだ。
彼はむやみに私に話しかける人ではなかったから、彼になら知らせてもいいと。
(こっちでいるんだね)
ある日、知らぬキャラクターからwisが届いた。
私の操るキャラクターの名はややこしく、通りすがりでwisを送られるとは思えない。
(貴方は・・)
(新しくキャラクター作ったんだ)
wisの主は、彼だった。
(どこにいるの?)
(話せる島倉庫前)
「いた」
近くで声がした。
wisをくれたキャラクターが立っていた。
「王子だったのか」
「うん」
そこにいたのは、血盟マークを持たぬ王子。
wizである彼に見慣れていたため、違和感があった。
「・・そのwiz、血盟に所属してるのか」
「僕の倉庫プリに入っているんですよ」
私の隣に立つプリが返事をする。
私のwizは知り合いの倉庫プリ血盟に所属していた。
フリーでいると勧誘にあう。
称号をもらわなければ血盟倉庫も使えないので、それでいいと思ったのだ。
「そっか」
彼の話し方に、寂しく思った。
彼がもし血盟を作るのなら彼の血盟に所属したいと、その時思ってしまった。
知り合いの倉庫プリに悪いとは思ったが、元々「勝手に脱退してもいいよ」と言われていたので、聞いてみた。
「もし血盟を作るんだったら、このwiz入れてもらえないかな?」
「いいよ」
即答。
正直、驚いた。
引退するのだから、目の前にいる王子もいなくなってしまう。
私を所属させても、いいことなどないはずだった。
「そちらのプリさんがいいのなら、俺はOK」
「いいですよ。どうせ倉庫プリですからw」
君主同士の話し合いもあっさりと、私のwiz移籍は決定。
次の日から、私のwizON時間が伸びることとなった。