05 wizの性転換

朝と深夜、私はwizでいることが多くなった。
実は、エルフ慣れしていた私にとって、wizは使い勝手の悪いクラスだった。
変身しなければ何をするにも動きが遅く、犬なしではオークを倒すにも魔法を使わなければならない。
王子もいないのに朝狩りをするのは、正直きつかった。
レベルが低すぎるため、魔法攻撃での狩はすぐにMP切れを起こす。
けれど、王子が初心者エリアを卒業する時には、私も卒業できるくらいの強さを手に入れたかった。
王子との深夜クラン活動は、ほぼチャットで、二人とも成長は遅かったけれど・・。
「Dice*1が♀キャラだったらな」
ある晩、王子が言った。
「♂wizかっこいいから、いいじゃないか」
「♀wizのが色っぽいw」
「♂wizに色気はいらん!」
私にはお気に入りの場所があった。
歌う島ケイブにある、光射す場所。
エンシェントサキュバスクイーンが出現するボス部屋だったが、私たちはよくそこで話をした。
「Diceが♀キャラだったら俺と結婚できるでしょ?
 もし他にクラン員が入っても、お嫁さんってことで特別扱いしても変に思われないなって思ったんだ」
複雑な気持ちだった。
私がwizを作ったのは元々独りでいるためであり、王子以外のプレイヤーと話をしたいとは思わなかったからだ。
けれど、王子の言葉は嬉しくもあった。
他にクラン員が入ったとしても、私と今のように話をしてくれると言っているのだから。
「お願いがあるんだけど」
「?」
「キャラ作り直すから、JOINさせて」
「そのキャラ、DELするの?
 そのレベルになるまで、すごく頑張ったんでしょ?
 もったいないよ」
「♀キャラにしたい。
 また、頑張るから、お願い」
「・・分かったよ。
 ありがと^^」
その日、♀wizが生まれた。
このwizで、私は王子に尽くしてみよう。
たった一人に尽くすキャラを作ったのは、この時が初めてだった。

*1:私の演じるwiz愛称